集団飼育をされる保護団体・個人保護活動者、自治体の保健所、センターの収容施設で気をつけてほしいことがあります。


ストレスが猫の命をおびやかす病気 猫伝染性腹膜炎(通称FIP)



猫はストレスに弱く 免疫力が下がると、感染のリスクが高くなります。
「移住の変化」 「怖い、さみしい、不安、精神的ストレス」が発症の大きな要因となって保護期間中や里親さんへの譲渡後に、猫伝染性腹膜炎の発症で多くの子が亡くなっています。

ストレスが免疫力を低下させウイルスの増殖が活発化してさまざまな病気を引き起こします。
ストレスの最大の原因は、親やきょうだいと離されて、移住することです。
 
集団環境に猫を入れるときの注意
どんな環境が、どれほどのストレスに感じるかは、(猫の年齢や個々の環境によって) 個体差がありますが、ストレスになっている場合が多くあります。

集団飼育 むやみに他の猫(兄妹でない猫)(仲の悪い兄妹猫)と同じ部屋や同じケージで一緒にしないで。
・別々に育った兄弟ではない子猫と一緒にすると、強い子弱い子の関係になります。
・月齢が違う場合、体格、運動能力の差で強い子弱い子の関係になります。
・兄妹同士の場合でも、強い子弱い子の関係になります。
 いずれも 弱い子がいじめられて、仲よく遊んでいるように見えても、一方がストレスを感じ、
 一緒にしてから数日から数週間後に食欲低下や元気消失で亡くなってしまうことが多くあります。

狭い部屋、狭いケージ、狭い空間で、集団飼育をしないで
苦手な刺激を限られた空間で逃げることも回避することもできず、一匹になれるスペースがなく、ゆっくり休めない環境で過ごし、ストレスを長期的に受け続けると、それが引き金となって重症化に繋がることがあります。

猫がくつろげる休憩スペースを用意する
家の中に居心地がよいと感じられる場所がないとストレスになってしまいます。
特に、猫を複数飼っている場合には縄張り意識がありますので、それぞれにくつろげる場所を用意してあげる必要があります。
環境変化を少なくし、猫がゆっくり眠ったり、安心して休憩できるプライベートな空間や、それぞれの部屋、または隔離できる場所を用意して、居心地のよい場所を自分の寝床や避難場所として使えるように、隠れることのできる高い場所なども準備して、可能なら広い空間を用意してあげてください。
猫が1匹又は、相性の良いきょうだいがくつろげる部屋を持たせるため、交代でケージを利用したり、部屋を分けたり、板を利用して区切るなど、交代で部屋に自由にさせるなどしてあげてください。
猫のストレスの対象をできるだけ取り除くように心がけてあげましょう。

猫ちゃんのストレスサイン、見逃さないで!【獣医師が解説】 外部情報

ストレスによる食欲不振
「食欲が減った」 「まったく食べない」 「食べたそうなのに食べない」など、多頭飼育していると食べていない子の見落としがあり、手遅れになることがあります。
必要な量の餌を食べられているかを確認することや、排泄の回数や状態のチェックは個体ごとに必要です。



猫伝染性腹膜炎(通称FIP)
この病気は、健康な猫のほとんどが持っている弱毒性のウイルス「猫コロナウイルス」が、ある日FIPウイルスに突然変異をすることで発症すると考えられています。

猫伝染性腹膜炎は、全年齢の猫で発症がみられますが、1歳未満の幼猫でより発症しやすいことが明かになっています。
猫伝染性腹膜炎の発症は、免疫抑制を起こすウイルス感染や、環境のストレスなどが関与していると考えられていています。

症状
普段は何でもないウィルスが突然変異をおこし、FIPウイルスになり、発症すると、腹や胸に水がたまり、呼吸も苦しくなり、熱、嘔吐、下痢を起こし、ご飯を食べなくなって、どんどん痩せてしまいます。
一度発症すると助かる率が低く、短期間のうちに命を落としてしまう恐ろしい病気です。
遺伝 純血種が発症しやすいというのも聞く話です。

感染を予防するワクチンはありません。
日本では、明確な治療法や予防法が見つかっていません。
そのため、猫伝染性腹膜炎を発症して亡くなった子が多くいます。

小さい子猫は、免疫力も弱いので、衰弱するのもあっという間です。
少しの異変を感じたら、手遅れにならないように早目に獣医師の診察を受けて下さい。
感染予防対策として トイレの共同使用をしないで。
感染(発症した)猫が排出した糞や尿などに含まれる猫コロナウィルスを口や鼻から摂取・吸引することで感染しますのでトイレを共有しないこと。
猫伝染性腹膜炎の感染症予防の観点からも完全室内飼いに徹しましょう。
この病気に限ったことではありませんが、ストレスのかからない快適な飼育環境を整えてあげましょう。
普段から健康管理に気を配り、定期的に健康診断を行い、必要があれば継続して抗体価の検査も行いましょう。

感染予防 消毒について(ウイルス全般使用法は共通です)
塩素系薬品(ハイタ―、ブリーチなど)を用いて消毒を行ってください。
500mlペットボトルにハイタ―原液2.5~10cc(ペットボトルのキャップで0.5~2杯)に水500ccで希釈し消毒してください(他の塩素系消毒薬を使う場合も濃度200~1000ppとなる様に調製してください)
ウンチやエサなど有機物の汚れがあると消毒効果は極端に落ちます。
あらかじめティッシュなどでこれらの汚れを取った後に消毒をします。
食器など漬け込める物は30分から1時間漬け込み消毒してから水でよく洗ってください。
使用の際は表示されている注意事項をよく読み、塩素ガスや手荒れなどに十分注意して、マスクや手袋を使用しましょう。


FIPの治療法についての外部最新情報

薬の服用で改善の前例があります。
日本では、猫伝染性腹膜炎、FIPに対する治療をされる病院は少なく、限られています。
治療薬も日本では承認されていませんが、アニマルピースが通院する病院で、輸入した薬で、現在通院中の保護中の子猫、譲渡後に発症した子猫の改善の事例があります。
輸入品の為、保険適用外で非常に高価な薬になります。